第1回 木賃サミット開催記録(後編)

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「木賃サミット」の後編、具体的にどんな改修をしたのか、から始まり、建物とどう向き合っているのか一歩深いところまで話がおよびます。では、つづきをお楽しみください。
ちょっと長いですが、ぜひご覧ください。

前編はこちら


◎登壇する木賃首脳

CASACO 【神奈川】 
加藤 功甫さん

前田文化【大阪】
前田 裕紀さん 

かみいけ木賃文化ネットワーク【東京】
山本直・山田絵美


~建物との出会いは突然に~

山本 活動や物件についてお話いただきましたが、前田さんは、もともとおじいさまが持たれていた物件を相続されたんですよね。

前田 ちょうど大学を辞めて東京にいた頃、実家から「おじいちゃんが倒れたよ」と連絡が入って、それでちょっとずつ前田文化の様子を伺い始めるようになったのが10年くらい前です。それまでは気にしていなかったんですが、よく見ると色んな人の気配がしてきて。
例えば、二階から毎晩男の人の甲高い声が聞こえる。どうも家族連れが住んでいるらしい。それで屋上に行ってみると、小6くらいの女の子が体操服のまま、静かに息を殺して隠れていたんですね。その子が二階の家族の娘さんだった。家賃全然払えずに、どこかで仕事をしながらたまに帰ってくる人とか。最初の頃は、そんな関係をつくったというか、浴びせられたというか。それが管理人としての前田文化との出会い。

山本 加藤さんは借りている立場ですが、物件と出会ったきっかけを教えていただけますか。

加藤 旅をしたときに異常なほどトルコが好きになって、帰国後トルコ料理店で働いたことをきっかけに、トルコ人たちと住むことになりました。ある日、家に帰ったら僕の荷物が全部出ていて。同居人に「どうしたの?」って言ったら、「家賃滞納していたら出ていかなくちゃならなくなった」って(笑)。ちょうど一か月半後にトライアスロンのレースを控えていたので、トレーニングしなきゃいけなかったんですが、とりあえず部屋がないし、走りにいこうと思って。それで、走った時にたまたま「賃貸物件」のポスターが貼ってあるところを見つけて。「住む場所がない、住む場所がない、住む場所がない」って走っていたら「住む場所があった!」と(笑)。で、電話したのが最初のきっかけですね。住み始めたのが2013年の11月、12月頃です。
 
山田 CASACOさんは、オーナーさんとの日々のやりとりをすごく丁寧にやられているように思うのですが、気をつけていることはあるのでしょうか?

加藤 大家さんの家はご近所なんです。CASACOの奥のドア、窓をバッと開けると大家さんの家なので、常に大家さんが前を通る。基本的には毎日会ったら挨拶します。あとは結構ご飯を食べるイベントがあるので、そのときはお裾分けを持っていく。最初は完全にお裾分けだったんですが、最近はお皿を持ってくるようになって、そこに千円札が入ってるという感じです。


~改修をする、それぞれの工夫~

山田 改修についてもお話をお願いしたいと思います。CASACOの階段、良いですよね。

加藤 部屋の真ん中に階段が二つ並んでいますが、この間に壁があったんです。改修する時、もともと隣の建物に人が住んでる前提でプランを立てていたら、改修を始める二か月前にたまたま出ていくことになって。それで両方借りることになりました。
半分の住戸で予算繰りをしていましたが、面積が倍になったら予算も倍以上になると。それがあってマンパワーを借りることにしました。僕らも料理好きなご近所さんに料理を作ってもらって。それで釣っていました(笑)。壊すときはけっこう危なかったので、頑丈そうな人たちにやってもらって(笑)。それが終わったら親子にも来てもらって。というのを半年くらいかけてやっていきました。

山本 くすのき荘のオーナーは、実は不動産屋さんなんです。ただ、「何してもいいよ」って言われています。改修ももちろん、用途についても法律に触れない範囲にやっていいということで。常に改修をし続けている前田さんはいかがですか。

前田 最初は、新しくしてきれいにして何らかの形で賃貸収入が入って、自分もそこに住めるような物件になったら楽な良い生活ができるだろうと工事を始めたんですけど。それができないんですよ、やろうと思っても。能力の問題なんですよ。で、今まだこういう状態です。

山本 最近世の中では空いている物件があると、どうやったらもう一度新しい価値を付加してビジネスとして成立しているとか。あと、どちらかというと僕らとか加藤さんはコミュニティに寄り添ってる側ですけど、前田さんはどちらかというと一定の距離を保っている。社会の中ではいわゆる正義と呼ばれている方にいきがちだけども、前田さんはとにかく「本当にそうなの?それだけが可能性なのか?」っていうのを、世の中に問うてくれている。
それが僕らは東京にいながら大阪から勇気をずっともらってる。関西エリアの木造物件が、とにかく自由な感じなんですよね。誰もが芸術家のように家を普通に直し、使いやすいように手を加え、そういうところが生き生きしている。

山田 前田文化のホームページに「この場所が確かに持っていたはずのエネルギーに満ち溢れた風景を再現すること。それが文化住宅を昭和の時代から受け継いだ我々の使命であり、文化住宅にとっての最大の弔いとなる。」と書いてあります。

山本 一応、建物を壊すっていうのは止めたんですか?

前田 そうですね。けっこう近所に大きめのタワーマンションがつくられ始めたんです。ずっと増え続けていたんですが、いよいよ目と鼻の先にでき始めたんです。それと、去年、地震が来た時に前田文化の外壁などが、ごそっと落ちて。直後にご近所さんから連絡が来て、「うちに入ってる瓦礫をすぐに除去してください」って言われたんです。それで僕らも「すみません」と言って作業したんです。
でも、周りが新しくなっていく中で、前田文化がこのまま今の流れで解体を進めて無くなってしまったら駄目なんじゃないかなと。逆にちょっと強くしていこうかなと、今考えています。

山本 倒れてたまるか、みたいな(笑)。加藤さんの方もこの前、床が。

加藤 昨年の11月くらいに、床がフニフニしてることに気づきまして、近所の大工さんに来てもらって見てもらったら…。うちは基礎を固めずに外壁とか、壊したものとかを床下に入れて隠してたんですけど。怨念のように蒸気が出て、気温差で下がカビたんですね。これは困ると思って、急遽、壁全部、床全部をはがしてやったんですけど。でも、そういうものがあったほうが、いいかなーって(笑)。

サミット会場 (笑)

山本 前田さんが常に手を止めないとか、加藤さんの問題が起きてまたそれを更新するとか。我々も、扉があかなくなったり、トイレのカギが内側から閉まって扉をバールで壊したりとか。自慢することでもありませんが、解決の方法というのは実はいくつかあって。皆さんそれぞれにそのレベル感を判断して建物と向き合っているところが面白いですよね。

~建物と身体性、向き合って感じたこと~

山田 建物との距離感とか、肌感覚みたいなのって木賃ならでは、のことがある気がしていて。私も全然大工仕事とかやったことがなかったんですけど、バールとトンカチがあれば、だいたい全部壊せる。意外と手の内にいろんなものがあるんだなっていうのが、建物と向き合って分かってきたような気がしてます。前田さんは、建物と向き合っていて感じたことはありますか。

前田 解体や補修は基本的に同じ仲間たちでやってるんですけど、この前の地震が来たときに泊りがけでやったんです。その時、仲間が「前田文化の中で寝ていたら、人には言えない夢を見た」と言い出したんですよ。「前田さんがなんでそういうふうになったかっていう。この床からの、土地からのイメージが夢の中にあって。そのイメージは前田さんには言えないんです」って言うんです。

サミット会場 (笑)

前田 ずっと気持ちを入れて壊したり、作ることをやっていれば、そういう能力が身につくんだなっていうことがわかった。やっぱり、どんな人が住んでたのかなとか、必然的に考えざるを得なくなってくる。この建物が出来るまでに、この土地にいた人はどんな人だったのか。みたいなことを、どんどん知りたくなる。

~木賃のちょっと先の未来を想像してみる~

山田 例えば10年とか15年のちょっと先の未来を見越したときに何をやっているのかお聞きしたいなと思っております。まず加藤さんはいかがですか?

加藤 自分は、あまり留まることができなくて、10年後、15年後に何をしているかは分からないというのが率直な回答です。今までは自分が移動していけば新しいものに出会うと思ってたんですけど、CASACOを作ってからは、いっぱい変な人が来るので、これでもいいなと。場所は同じだけど、自分がいるところに人が来て、違うことがいっぱい起きてくるのであれば、その場所にもいられるんじゃないかなって。
あと、やっぱり木の家、手のかかる家の方が良くて。僕は、存在が当たり前になるのが嫌で、コンクリの家に住んだらもしかしたら10年20年スパンで何も考えなくてもいいのかもしれない。でも、こういう場所に住んでいると一か月スパンで考えなきゃいけない。下手したら一日スパンで何か起こる。今、自分はそういうものがいいなって思ってるので、たぶん10年後15年後も、CASACOかもしれないし、違う場所でまたCASACOみたいなことやってるかもしれないし。こういう手がかかるところに誰かといるんじゃないかなという気はします(笑)。

山本 なるほど。前田さんはどうですか。

前田 僕は周りにタワーマンションが増えていっている中で、今ある文化住宅が残っている状況から、この先を考えたとき。推測なんですけど、人口自体が減ってタワーマンション自体も耐久年数がどのくなのか正直よく分からない。あんだけ早く作られているから適当に作っている可能性もある。つまり、今新しく建てられている建物が、30年後、50年後に、もしかすると不要になっているか荒れているか。どうしようもない状況になっている可能性があると。それと大阪の人が古い建物そのものを「文化」って呼んでいる可能性があって、だから30年後にタワーマンションとかを「文化」って呼びたいなって思う。

サミット会場 (笑)

前田 誰かが言い出したらそれが広まるかもしれないし、その時に今ある文化住宅が残っていれば違う名前を付けるかもしれないんですよ。もうタワーマンションが文化になるんで。今の前田文化は…CASACOになる。

サミット会場 (笑)

加藤 大阪じゅうにCASACOができる(笑)。

山本 それぐらい建物の価値というのは、実は曖昧。僕らも「木賃」とか、「文化住宅」って言ったり。かつて40~50年前は、木賃にも輝かしい未来しかなかったんですよね。きっと、今言われたように、タワマンも輝かしい未来があって、もしかしたらそうなっちゃうかもしれない。

山田 そうですね。我々はどこに。

山本 僕たちは、今は山田荘とくすのき荘というスペースを仲間と一緒に運営しているんですが、最近、アパートを持った地域のおじさんから、なんか使ってみてよという話をいただくこともあります。そのおじさんは、茨城に山を買って日本庭園をひたすら作っている面白い人。だから、建物が単純におしゃれできれいになるよりも、そういったまちの人の趣味や、その人の生活みたいなのも含めて、それに合った人をマッチングしたい。
そうするときっと建物も生きてくるだろうし、オーナーさんもちょっと楽しくなるかもしれない。ぼろぼろだった使い物にならなそうな木賃や文化住宅たちが、急に生き生きするような未来を考えていきたいですね。

山田 そうですね…

山本 僕は婿で上池袋に来てるので、オーナーの山田さんとしてどうでしょう。けっこう世の中と闘いますよね(笑)。僕はね、けっこう長いものに巻かれそうになるタイプなんですけど。

山田 池袋という地域は、やっぱり都心ということもあって、変化が早いんですよね。くすのき荘の前の道も都市計画道路がひかれていて。出来るまでに何年かかるか分からないのに、どんどんポコポコっと用地が買収されていって、まちに穴があいているような状態です。便利になるのは分かるんですが、そういう現場を見始めると、なんかちょっとおかしい感じがして。そんな中で、すごく遊び場を回復したい気持ちが強くなりました。まちの隙間だったり、くすのき公園はもともと大蔵省の官舎があって、そこが子どもの遊び場だった。子どもって、遊び場ではなくても、いろんなところに遊び場を作っていく。決められた用途じゃないけど、住んでいる人によって遊び場が増えていくようなまちにしていきたいなと。
だから、くすのき荘や山田荘も「ここ何ですか」って聞かれても、「なんでしょうね」って言い続けたいなと。で、場所の意味や使い方は、ここに来る人が決めればいいかなって。それは意外と簡単に今ある場所でできることだし、空いているスペースがあればできる。そういう文化を回復していきたい。

山本 我々がやっているこのプロジェクトは、山田絵美の遊び場を回復するプロジェクトなんだっていうのが、わかってしまった(笑)。それに付き合わされているみんなは、もちろん大変なんですけれども、ただ自分だけのものでなくて、それぞれの人にとって遊び場を回復していくとか、表現する場所を獲得していく。そこに木賃やまちが使われていく。そういうのは楽しそうですね。

山田 そうですね。楽しくありたい、それだけかもしれないです。

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くすのき荘1階で何かを創作中の少年

~賃貸借契約も自由に~

山本 三者三様のスタンスがあって、どれが正しいというわけでもなく、レンジの深さ、広さを皆さんと共有できたらいいなと思っています。サミットなので、ぜひ会場の皆さんにもお話をふっていきたいと思います。そこにいるのは、実はこの近所に住んでいる木造、風呂なしアパートに住んでいる方で「木賃さん」と呼んでいます。

木賃さん(参加者) 加藤さんのところは、借りた経緯からすると不動産屋を通さない直接契約ということなんですかね?

加藤 一応大家さんも何かあった時のためにということで不動産屋さんに入ってもらいました。でも、不動産屋さんは大家さんのいいなり、みたいな感じで。大家さんが「こうするから」って言われたら、不動産屋さんが「え、ちょっと安すぎませんか」みたいな(笑)。「でもいいの、決めたらから」って。それで契約が始まる、そんな感じでした。

山本 珍しくないですか?けっこう不動産屋さんに任せちゃうのに。

加藤 たぶん不動産屋さんも変わってるんですよ(笑)。不動産屋さんとはいいコンビネーション。本当は又貸しもいけないって言われてたんですけども、大家さんのご厚意で特例に「CASACOに限ってはその限りではない」と入れてくれて。加藤が貸してる限りは大丈夫、大家代理みたいになっている。けっこうハチャメチャな感じです。

サミット会場 (笑)

山本 そう、けっこう契約書って面白い。僕らも山田荘の住人とは契約を結ぶんですけど、クリエイティブになれる箇所がいろいろあるんですよね。例えば、一階に住んでる男子は、入居する前に猫を飼いたいって言っていたので「猫を飼うなら毎月一回大家と面会させろ」と契約書に書きました。

山田 未だに飼わない。※後日談:7月にかわいい仔猫がやってきた!

サミット会場 (笑)

山本 「早く飼え」って言ってるんですけど(笑)。「契約違反だぞ」って(笑)。冗談ですけど、世の中で流れてる契約書ではなくて信頼関係とか関係性でできることってありますよね。法律の追求というよりか、それをなぜ認めてくれている空気になっているのかを共有していったほうがいいと思うんですよね。

~破壊する欲求が創造へとつながる~

M城 三者とも建物を壊すじゃないですか。でも壊す前に、躊躇することはないのでしょうか。壊す前と壊した後の感覚みたいなのをちょっと知りたいなと。

前田 それはいろいろな段階によってありましたね。最初の頃は何も考えずに壊して、新しくきれいにする。もしくは汚いところを隠すことをやってたんですけど。なんで壊さなくちゃいけないのか、なんで汚いと思っているのか、そのままじゃダメなのか、とか考えながらやっていると、土の上に砂があって、その砂を掃くみたいなことをやるようになるんですよ。どこからどこまでがきれいにするものなのか、とか。延々と土は出てくるんですけど、何してるんだろうみたいな。

山本 でも本当この柱がきれい。レトロでいいとかって言いだす人とかいるし、汚いっていう人もいるし、その価値観ってけっこういろんな方向に転がる。

T屋 人間、誰しも破壊欲求があると思うんですね。加藤さんも近所の人と石畳をバラバラにした。破壊することに人が集まるから。破壊欲求とクリエイトってすごい接続してるんだなって思いました。壊すことを共有する、共有するとコミュニティができる。コミュニティができると新しいものを創造する、コミュニティがアップデートされるの繰り返し。どう思いますか?よく山本さんが言ってるのが、掃除をすることで建物と対話する。例えば、掃除しなければこの柱の存在を意識しないみたいな。

山本 そうそう。けっこうゴミがどこにたまっているとか、壊れそうとか、掃除してるとけっこう気づく。建物と対話してる感じになって、次にまた創造し始めるみたいな。

~自分にとっての木賃とは?~

T屋 建物をどのような存在だと思ってますか?我が子、友達、家族、テント…。

加藤 僕はとりあえず雨風しのげればなんでもいいと思って生きてきたんですけど、最近は家も生きてるんだなあって思うようになって。木は100年経って初めて一人前になる強くなるという話を解体屋のお兄ちゃんから聞きました。それからは住んでるというよりも、その人の中にいる、みたいな。うまく説明できないんですけど、家族なのか、友達なのか。

M城 だいぶ年上ですね。

加藤 そうですね。おじいちゃん。

前田 難しいですね。でも前田文化に関しては、自分そのものくらいに考えてる。

山本 一体化してる?

前田 そう。僕はすごく飽きっぽくて興味なくなったら何もしなくなるんですけど、やっぱ延々とやり続けて、ほったらかしにはできない状態です。それは、自分の体くらいに思ってないとできないだろうなと。以前、背中にずっとできものがあったんですよ。それで、改修をしてた時に今まで見てなかった壁の中をみたら、建物の右上のところが白蟻がいっぱい出てきた。そういうことがありました。

サミット会場 (笑)

~会場の木賃オーナーから~

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山本 思考とか身体感覚がかなり一体的になってるパターンですよね。ちなみに、会場の皆さんの中で、私オーナーですって方います?ぜひ一言、感想でも自分の建物の状況でもいいですし。

A井 アパートの大家と、木造賃貸アパートの再生の仕事をしています。だんだん建物を木造でつくることがなくなってきてる中、一度壊しちゃうともう一回作るのは難しい。だから熟成させて発酵させていく、まちのうまみのような、そういうものがあると、まち自体の雰囲気がよくなるんじゃないかな。

山本 いま物件自体が発酵している最中ですよね。今時点では、昔からある町家は素敵と言ってるけど、木賃もあと30年くらい経つと、そんなふうになっちゃう。

A井 放っておくとただ腐って食えなくなっちゃうと思うんです。だから、ぬかどこみたいに誰かが風通しよく混ぜておくと、みんな美味しいって言って。それを、ちょっとずつおかずにする。

山本 現代人は発酵させるための手入れをちゃんとしなきゃいけない。

A井 そうですね。熟成させるなら、長ければ長いほどいい、自慢できるみたいな。ちなみにうちはアパート自体コンクリートなんですけど、築61年なんですよ。さっきタワーマンションの30年の話があったんですけど、30年ではびくともしない。40年でガタがき始める。50年はやばい、60年は廃墟、みたいな。60年経った賃貸住宅をどう直すか、というのに興味がある人はぜひうちに来てください。

山本 ご自分の持っているところは、すでに再生したり何か手を加えたり?

A井 そうですね。けっこうお金かかっちゃったんですけど、新しい壁を外側に基礎をつくりました。でも木造は逆にいじりやすい。かきまぜやすさというか、プロじゃなくても手を加えていい感じにできるのは、木賃ならではの良さなのかなと。

M木 北区の上中里から来ました。普段は子どもの遊び場をつくる活動をメインにしています。私が持っているアパートは、一人世帯用の部屋が4つですごく小さいです。近くの不動産やさんに勧められて購入しました。アパートを買った時には、入居者が出ていったら面白いことやりたい、サラリーマン以外に収入があったら安心だよなって思っていたんですけど。実は入居者の中には生活保護の人やシングルマザーの人がいたりして、皆それぞれが本当に一生懸命生きている。そういう方々の生活を守るために家賃を下げたり。だから、入居者たちが安定して住まうことを考えたら、なかなか僕がやりたい楽しいコミュニティづくりができない状態で。いずれ誰も住まなくなったらこんなことしたいなって思って、今日来ました。

Yソン アーティストでキュレーションやっています。何年か前に上池の一丁目で家を買いました。4畳半が三つと6畳が一つ。各部屋にガスとシンクがついてトイレが付いている。たぶん、もともと共同住宅で一階に大家さんが住まわれてたんだと思います。それで、家を買う時に、家についていろいろ調べたら、平均寿命が28年ということを知り、驚きました。住宅ローンを組んで、払い終わったらリフォームの営業がかかる。そしてだいたい30年周期で家が壊されてゆく。だから30年しかもたない家をつくれば良いとなる。
あと、本郷で築百年以上の木造の住宅を調べている研究者がいて、なんでその家が百年以上も残っているのかというと、単にリフォームブームに乗り遅れたとか、うっかり忘れていたとか、本質的な理由じゃないところで残っていると。手入れしたからじゃなくて、うっかり具合が、意外と寿命を持たせるのかなと。失礼ですけど、前田文化が手を入れすぎても壊れる、手を入れれば良いものでもないと思いながら話を聞いてます。こういうふうに素敵にできたらいいなって思いながらも、うちはまだ途方にくれています。

~おわりに、木賃が向かう未来とは?~

山本 もしかすると、壊してみたら何かが始まるかもしれない(笑)。それでは、最後に加藤さん、前田さんから一言ずついただけますか。

加藤 電車に乗っていていつも思うんですが、電車で乗り合わせてる人は、当たり前なんですけど今後一生合わないじゃないですか。こうやって2時間くらい皆さんと一緒にいるけれど、もう一生会わない可能性もあるんですよね。でもどこかでまた会うかもしれない。こういう感じが僕はすごい好きで(笑)。あんまり執着せずに、でもつながる時はつながるんだなあって。今日前田さんとも初めて会いましたが、何か始まっても面白いし、始まらなくてもそれはそれで面白いし、というのを今日感じていました。すいません、変な総括ですよね(笑)。

山田 ありがとうございます。では前田さん。

前田 今、僕とか山田さんが管理人になっている状態は、本当は年代的にはスキップしている状態です。だから、もうしばらくして、いきなり相続したけどどうしたらいい?という若い人たちが徐々に出てくるのかなって。こういうことを今のうちに整理していってたら、面白くいろいろできるんじゃないかなと。何となく思っているので、続けてほしいと思います。

山本 その時に前田さんは、相続した人の期待の星になるわけですね(笑)。悩まれてる方が来たら、きっと僕は前田さんを紹介します(笑)。

前田 ぜひ。

山田 人と建物との関係も、もっと自由になっていいなと、すごく思っています。

山本 そうですね、自分なりに建物と向き合うことで、自然と良い形の場所や形みたいなのが生まれてくるといいなと思います。皆さん良い木賃を見つけたら、ぜひ寄り添ってみてください。
ということで、木賃サミット第一回、来年はあるのかわかりませんが、ここで終わります。
今回はお越しいただき、ありがとうございました。

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かみいけ木賃文化ネットワーク


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