第1回 木賃サミット開催記録(前編)

第一回木賃サミット レポート
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2019年3月23日、木賃文化週間の一つのプログラムとして、記念すべき第1回「木賃サミット」を開催しました!各地の木賃首脳をお呼びして開催した今回のサミット。さてさて、どんな話が飛び出すのか!?このブログで(前編)(後編)に分けてご紹介します。ぜひご覧ください。

◎登壇する木賃首脳

CASACO 【神奈川】 
加藤 功甫さん

前田文化【大阪】
前田 裕紀さん 

かみいけ木賃文化ネットワーク【東京】
山本直・山田絵美

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山本 私たちは木造賃貸アパートなど、昭和に建てられた、なかなか手ごわい建物たちと日々付き合っています。この「木賃サミット」では、同じく木賃や文化住宅を楽しく、面白く使っている代表選手をお招きして、過去のこと、現在のこと、これからの未来についての話をしていこうと思います。まずはそれぞれの活動紹介からお願いします。

~プロジェクト紹介~

CASACO-世界一グローバルでローカルな、まちの寺子屋

加藤 加藤功甫と申します。よろしくお願いします。CASACOは、横浜の日ノ出町というエリアで、桜木町の近くにあります。皆さんがご想像するきれいな方じゃなくて、JRの反対側のちょっと奥ゆかしいエリア(笑)です。

この場所に出会ったのは、2011年から2012年にかけて自転車でユーラシア大陸を旅をしたことがきっかけです。そこで、いろんな人種、いろんな人に出会って家族みたいに温かくもてなしてもらいました。日本に帰ってきた時、これまで自分が出会った人たちには、おそらく二度と会えないだろうと思いました。だから、彼らに恩返しできない代わりに日本に来る海外の人に同じように感じてもらったり、「日本って素敵だな」って思える場所があったらいいなと、ずっと思っていました。

初めに行ったプロジェクトは、世界中を旅しながら、出会った人に一本20センチくらいの糸を渡して、それを僕が持ってる糸の先につないでもらう。それを巻き取ってまた違う場所に行って、次に出会った人にその糸の先に糸を結んでもらう、ということ続ける。それによって世界中の目に見えないつながりを糸で視覚化できないかなという「糸つなぎプロジェクト」というのをやりました。それで、これが今13,000人くらいつながって、90か国くらいまで伸びてます。

世界のいろんな人とつながって、いろんな場所で講演したり、小学校で授業をすることになったり。そしたら、お子さんや親御さんから、実際に旅に連れて行ってほしいという要望が出てきました。最近は、留学生と一緒にいろんな僻地に行ってみようというツアーをしたりとか、高校生や大学生と一緒に海外に本当に行っちゃおうというプログラムをやっています。それで、もっと日常的にいろんな世界に出会える場所があると良いなと思って、生まれたのがCASACOという場所です。

加藤 CASACOは、築70年くらいの木造の隣り合った二戸の建物がくっついてできています。当初は、その片方だけを借りていました。改修前は「何やってるかわかんないし、不気味だし、お化け屋敷みたい」(笑)な感じで言われて。「イベントをやってます」って黒板を出しても、埋もれて誰も来ないというのが三か月くらい続きました。そのイメージを払拭するために、「東ヶ丘新聞」と勝手に名前を付けた町内新聞を配るというのを2014年から毎月続けて、もうすぐ60号になります。町内会長の交代は一大ニュースです。一面は地域のことを発信するんですけど、下の方ではCASACOについてアピールしていきました。

それから、やはり見た目が不気味なので、改修することにしたんですが、外観については木の感じを残していきたいと思いました。大家さんから「古いから好きに使っていいよ」と言われたのを、どんどん拡大解釈しまして(笑)。徐々にコミュニケーションを取りながら好きなことをしました。たとえば、近所の半世紀くらい前に敷かれた石畳がなくなるというので急遽もらってきて。モルタル漬けだったので一個一個はがして軒下に活用しました。作るときは子どもたちも巻き込みました。半年くらい建物の改築をしました。

それで建物は出来たけれど家具がなくて。とりあえず近所の方に「何かないですか?机ないですか?」って話してみたら、必要な家具やテレビも全部いただきまして。最近は物が多すぎてバザーをするくらいになってます(笑)。
色もきれいに塗り、入り口も削りまして、今はこんな感じになっています。

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CASACOの入り口の様子(CASACOHPより)

サミット会場 おおー!!かっこいい!!

加藤 外見は塗っただけなんですけど(笑)。部屋は、大きく二階と一階に分かれています。二階は留学生が住んでいますが、長く住んでいるから怪しさも少なくなって地域に溶け込みはじめている。一階はいろいろな世界とか価値観に出会える場所として「世界の朝ごはん」とか、明日もタイ編をやります。また、近所のママさんが乳幼児連れのママさんたちの集えるカフェをやってくれています。

あとは、地域にスポットを当てて「宮崎の夜をやろう」とか。留学生と近所の方たちとでお花見をやったりとか。近所の若い22~23歳の保育士さんなんですけど、地域のアイドルみたいになっていて。この子が「あかり食堂」という場をオープンすると、近所のおじいちゃんおばあちゃんたちが来る。ほかにもハロウィンをしたり。隣のお宅の方が和菓子教室の先生をされていた方なので、ワークショップで日本文化を知る時間をやったりとか。

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CASACO 「みいの和菓子教室体験会」(CASACOHPより)

「ウガンダナイト」を開催したときは、何故か大使館の人が来たり。CASACOは、そうやっていろんな方々が混じりあって、話せたり出会える空間になりつつあるのかなと思います。


前田文化-建物と本気で遊ぶ

前田 大阪府茨木市にある文化住宅という建物を所有しています。茨木市はどういうところかというと、チェーン店とかタワーマンションがいっぱい立っているまちです。
文化住宅というのは、おそらく関東でいう木賃アパートで、関西での呼び名です。高度経済成長期に建てられた二階建てのアパートで、各部屋にトイレとキッチンがある。僕の推測なんですけども、それまでの集合住宅は、共同キッチンが当たり前だった。その中で、文化住宅には部屋ごとにトイレとキッチンがついているので「文化的な生活が送れるぞ」ということで「文化」という名前をつけた。

僕の家は前田という名前の人が管理していたので、前田文化といいます。僕は5~6年前に相続して、入居者もいましたが、結構空き部屋もありました。一室の間取りは、二部屋になっていて手前にキッチン、奥は土間。トイレがあって、洗濯機を置くスペースがあって。それが一階に4部屋、二階に4部屋、全部で8部屋ある。大阪の文化住宅は、けっこうこのパターン多いです。前田文化では、基本的には、ここを建て替えるというプロジェクトをずっとやっています。

初めにやったプロジェクトは、一階の部屋と道路に面した外壁があるんですけど、そこに大きな入口を開ける工事をしました。この入口が開く前、一階の人が道路に出る時間が15秒くらいかかっていたんですけど、ここが開くことで2秒でいける。その儀式として、新幹線を飛び出させる。
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一階の壁の開通式で新幹線を飛び出させた。(前田文化HPより)

サミット会場 (笑)

前田 文化住宅は土壁でできている壁間仕切りなので、けっこう簡単に解体することができます。そこで、お相撲さんに来てもらって、張り手で土壁を解体してもらった。これもある種儀式なんですけども。誰に向けてということは、やってないです。文化住宅はお風呂がない。ある種風呂がないっていうのが、文化住宅のアキレス腱なので、そこを克服するために、わざわざモルタルでお風呂をつくってお湯をはってお風呂に入る。
あとは、文化住宅のことをもっと知りたいと思った時に、6畳の部屋で素振りを500回やってください、というのをやったんです。6畳の部屋だと、下手くそな振り方をすると、柱にバットが当たってしまう。でも500回振り続けたら、柱に当たらずに自然と脇が締まった、す~ごいコンパクトできれいなスイングができるようになった、ということがわかったんですよ。

サミット会場 (笑)

前田 また、劇団子供鉅人(こどもきょじん)さんという方に、文化住宅の部屋全部を使って演劇をやってもらいました。お芝居の話の中で、部屋を壊していかなければいけないというストーリーにしてもらって。最初はいろんな部屋でお芝居をやっているんですけど、最終的にお客さんもまじって全部壊していかなければいけない。それで部屋が全部つながっていく。

2018年の1月頃に大規模な解体工事をしようと思って、その時にいろいろと文化住宅についての昔の新聞記事を調べたんです。そしたら、放火が起きましたとか、壁が薄くて住んでいる人同士で殺し合いが起きましたとか、音がうるさくて争いが絶えないとか、たくさんの人が死んでいるんだな…と。
前田文化の周辺は住宅地なので、解体工事を普通にやってしまうと騒音問題になってしまう。下手したら人が死にかねない。それでオーケストラの人を呼んで、解体工事と演奏を一緒にやれば、その問題が解決するんじゃないかなと。

サミット会場 (笑)
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「解体工事」×「コンサート」騒音コンサート(前田文化HPより)

前田 野村誠さんという現代アーティストで即興演奏をする人と、日本センチュリー交響楽団の演奏者に来てもらって。バイオリニストの方に作業着を着てもらって、工事をしながら演奏する。ガチの大工さんにも来てもらって、ガチで外壁とかも解体していくことをやっていました。お客さんもいっぱい入ってくれました。

それから昨年、大きな地震があったとき、外壁も落ちてしまって大変なことになりました。役所の人が調査に来るんですけど、これは地震によって壊れているのか、解体なのか、どこからどこまでが被害なのかが分かりません、という話をされて。それで、今また何とかして自分たちでつくり直しました。


かみいけ木賃文化ネットワーク-足りないものは、まちを使う

山田 私たちは、かみいけ木賃文化ネットワークというプロジェクトをやっています。上池袋は、豊島区の最北端で北区、板橋区もすぐ近くにあります。池袋から一駅ということで、すごく利便性も良く、戦後から70年代くらいに建てられたアパートが今でも残ってる。所有している山田荘は、築40年で、風呂なしトイレ共同。いわゆる昭和のアパートです。下に3部屋あって、上も3部屋。共用廊下の突き当りが共同トイレです。部屋は6畳間で、超ミニキッチンが付いています。

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山田荘

活動のきっかけは、2013年にさかのぼります。私たち山本山田は夫婦なんですが、たまたま当時、山田家が所有していた山田荘の2部屋が空いたので、そこにパッと入居しました。山田荘は、普通のアパートですが、6部屋あるうち、下の3部屋は完全に我が家の私物置き場で、第二の部屋のように使っていました。書斎だったり、母のパッチワークの教室だったり、子どもの遊び場だったり、そういう記憶がありました。

そんな山田荘なので、もっといろんな使い方ができるんじゃないかなと思っていたところ、2014年の春に豊島区で「としまアートステーション構想」の「アートステーションY」というプロジェクトに出会いました。まちの中にアートが生まれる小さな拠点をつくるという企画で、たまたま場所を探していたんです。それで、山田荘で実施することに。その時、美術家の中崎透さんという方がやって来ました。

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アートステーションYでのまち歩きの様子、左が中崎さん

山田 中崎さんが、山田荘の一室に半年くらい、通ったり、泊ったりして考えたのが、まちを大きな家に見立てるということでした。山田荘の一室はすごく狭いので、プロジェクト拠点として使い、まちの中にいろいろ資源があるからネットワークして使ったらいいんじゃないか。それで10個ほどのプロジェクトをやっていきました。小学校で音楽会をやったり山田荘の前でガレージセールをやってみたり。

最後に、まち中に既にあるものを「作品」に「みたてる」というプロジェクトをしてマップをつくったりもしました。ネットワークするというコンセプトは、中崎さんのプロジェクトを継承しています。
それで、このときに山田荘のような普通のアパートも面白いと思っている人がたくさんいることが分かりました。面白い人たちが来るんだったら私たちは山田荘を出なきゃと思い、引っ越し先を探しました。それで見つけたのが、くすのき荘。

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くすのき荘

山田 見つけちゃったんです(笑)。特に何も考えずに借りました。もともと和室のつくりだったんですね。窓からは、くすのき公園が見えるのが特徴です。とりあえず、ハードの整備を開始して。ただ、壊すのも作るのも大変で。自分たちだけでやるのはもったいないし、本当に人手が欲しい。それでビアガーデン付きリノベーション。おいしいビールを飲むために壁を壊しましょうと。結局、場所が出来上がるのに一年半くらいかかってしまいました。

次にどう使うかです。くすのき荘は、自分たちだけが住むには広すぎるし、山田荘もあるし。では、それを一体的に考えてみようと。山田荘は路地奥にあるので、アトリエとかレジデンスにふさわしい。くすのき荘は公園に隣接していて開放的。これらを掛け合わせる。
「足りないものは、まちを使う」というのは、例えば、木賃暮らしでお風呂がなければ銭湯に行ったり、台所がなければ近くの食堂に行ったりとか、うまくまちを使う。それが山田荘とくすのき荘の間にも成立しうる、これを現代版に読み替える。

山本 現代版に読み替えるとは、風呂なし生活を推奨しているわけではなくて、家だけに閉じこもる生活ではなくて、もう少し仕事だったり趣味、まちだったり、拠点をいくつか自分がテリトリーとし持てる場所をネットワークしながら生活したら、活動したら楽しいんじゃないかということです。

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ネットワーク図

山田 主なプロジェクトとしては、木賃をネットワークしながら使ったりとか、地域のクリエイティビティを応援したり、木賃文化を掘り下げることを仲間・メンバーたちとしています。
メンバーには、美術家がいたりとか、近所のママさんがここで子どもを遊ばせたり、地域のお祭りに参加したりもしています。ほかにも、木賃をリサーチして「木賃かわら版」にまとめたり。木賃文化とは何かを実感する、考える期間として始めたのが「木賃文化週間」です。
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前編はここまで!後半は、ディスカッションしながら「木賃」の明日について語り合います。

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